江のしま(島)のかたより月のごとくひかり(光)たる物、まり(鞠)のやうにて辰巳(たつみ)のかたより戌亥(いぬい)のかたへひかり(光)わたる。十二日の夜のあけぐれ(昧爽)、人の面(おもて)もみ(見)へざりしが、物のひかり(光)月よ(夜)のやうにて人々の面もみなみゆ。太刀取目くらみたふ(倒)れ臥(ふ)し、兵共(つわものども)おぢ怖(おそ)れ、けう(興)さめ(醒)て一町計りはせのき、或は馬よりをりてかしこまり、或は馬の上にてうずくまれるもあり。
(御書1,060㌻)
【意訳】
江の島の上空に、丸く月のように光る物が東南の方角から北西の方角に飛び去りました。十二日の深夜で人の顔を見ることもできないような真っ暗闇の中でしたが、光が月夜のように照らして人の顔がよく見えました。強い光で大刀取りの目が眩み倒れ伏しました。兵士たちは恐れ驚くばかりか怯えて遠くに走り去りました。或は馬より降り、居住まいを正して平伏したり、或は馬の上で手を合わす者もおりました。

龍ノ口
大聖人が竜の口に着かれたころには9月の月も既に沈み、空も海も真っ暗でした。その時、一陣の怪しい風が巻き起こり、空を覆っていた妖しい雲から猛然と雨が降り出しました。不思議な稲妻が東西に閃き渡り、雷が縦横に鳴り響き、柵は倒れ幕は裂け、かがり火も一瞬で消えてしまったその瞬間、まんまるで強烈な光を放つ物体が東南の空から飛んできました。その物体は、満月ほどの大きさで、矢の飛ぶような速さでした。大地は揺れ動き、天も地も崩れ落ちるのではないかと思えるほどでした。大刀取りの依智三郎直重が、首を切ろうとして振り上げていた、「蛇同丸の名剣」は三つに折れてしまいました。
(絵に付けられている文を現代語に訳しました)
(広布唱題行〔聖寿801年9月4日〕にて)