『種々御振舞御書』 建治2年 55歳 御書1,055㌻
去ぬる文永五年後の正月十八日、西戎(せいじゅう)大蒙古国より日本国ををそ(襲)うべきよし牒状(ちょうじょう)をわたす。日蓮が去ぬる文応元年太歳庚申に勘(かんが)へたりし立正安国論すこしもたがわず符合(ふごう)しぬ。此の書は白楽天が楽府(がふ)にも越へ、仏の未来記にもをとらず、末代の不思議なに事かこれにすぎん
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(現代語訳・意訳)
去る文永五年(1268年)1月18日に大蒙古国より、日本を侵略する旨を認めた書状が届きました。日蓮が文応元年(1260年)に、「法華経を信仰しなければ他国から侵略される」と認めて幕府を誠めた書である『立正安国論』に述べたことが全て符合しております。このことから『立正安国論』は、白楽天の楽府をも越えるものであり、仏の未来記にも劣りません。末代で起る不思議なことでも「立正安国論』の予言的中を越えるようなことはありません。
〇白楽天が楽府=白楽天(白居易)の楽府には、当時の社会の問題や政治の腐敗が批判的に描かれており描いており、人々の共感や共鳴を呼び起こした、とされております。
〇仏の未来記=仏が未来のことを説かれた経文。
〇末代の不思議=末代は末法とも拝せられます。不思議は不可思議のことで、言葉でも表すことができず、心で思いはかることもできないことです。
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『立正安国論奥書』 (文永6年12月8日) 48歳 (御書419㌻)
文応元年太歳庚申之を勘ふ。正嘉に之を始めてより文応元年に勘へ畢んぬ。
去ぬる正嘉元年太歳丁巳八月二十三日戌亥(いぬい)の剋(こく)の大地震を見て之を勘ふ。
其の後文応元年太歳庚申七月十六日を以て、宿谷(やどや)禅門に付して故最明寺入道殿に奉れり。其の後文永元年太歳甲子七月五日大明星の時、弥々(いよいよ)此の災の根源を知る。文応元年太歳庚申より文永五年太歳戊辰後(のちの)正月十八日に至るまで九箇年を経て、西方大蒙古国より我が朝を襲ふべきの由牒状之を渡す。又同六年重ねて牒状(ちょうじょう)之を渡す。既に勘文之に叶ふ。之に準じて之を思ふに未来も亦然るべきか。此の書は徴(しるし)有る文なり。是偏(ひとえ)に日蓮の力に非ず、法華経の真文の感応の致す所か。
文永六年太歳己巳十二月八日之を写す
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(現代語訳・意訳)
立正安国論は文応元年(1260年)に、折伏の書として為政者に提示しました。構想を練り始めたのは、正嘉元年(1257年)で、文応元年に完成しました。きっかけとなりましたのは、正嘉元年8月23日の大地震に遭遇したことです。善良な多くの人々が災害で塗炭の苦しみを受けるのは何故かということを考えたのです。書き上がった立正安国論は、文応元年7月16日に宿屋光則を通して、故北条時頼に奉りました。さらにその後の、文永元年(1264年)7月5日に大彗星が現れたときに、いよいよ今日の災難の根本的な原因がわかりました。文応元年に立正安国論を献上して9年後の文永5年1月18日に、西方にある大蒙古国より、我が国を襲撃すると認めた書状が来ました。翌6年にも同じ内容の書状が来ました。これは、立正安国論で「他の国から侵略を受ける」と述べたことが間違いではなかったことを証明するものです。立正安国論で述べたことが正しかったことから、未来も同じような災難に襲われるでしょう。この立正安国論は仏法の正邪を証明する文書です。このことは日蓮の力ではありません。法華経が真実の教えである何よりの証拠です。日蓮は正しい教えに導かれてこの書を著したのです。
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『大悪大善御書』 文永12年 54歳(御書 796㌻)
大悪をこ(興)れば大善きたる。すでに大謗法(ほうぼう)国にあり、大正法必ずひろまるべし。
7月に入り、朔日講では『立正安国論』を拝しました。唱題行では大聖人様御自らが『立正安国論』について仰せになる御書を拝しました。
2月の御講では、『大悪大善御書』の大悪は蒙古来襲を指す、と拝することができると申し上げました。大謗法が国に充満している故に他国から侵略される「他国侵逼難」は経文に説かれている通りでした。その他国侵逼難が現実になったことは、『立正安国論』の真実が証明されたことになります。ゆえに「大善」であると拝することができると考えました。誤解のないように申し上げておきますが、他国侵逼難を歓迎してのことではありません。侵略は双方ともに苦です。ロシアのウクライナ侵略を見れば明らかです。非はロシアにあると私は考えますが、苦を受けるのは民衆です。過去も現在も未来も、人々が受ける苦は日蓮大聖人様の苦です。「一切衆生の同一の苦は悉く是日蓮一人の苦なりと申すべし」 (『諌暁八幡抄』1,542㌻)と仰せの如くです。
繰り返します。あくまでも『立正安国論』で述べられたことが真実の姿となって現れたこと、つまり経文に説かれる誹謗正法が間違いでなかったこと、正法は法華経であること、それを教えて下さったのが日蓮大聖人様であられたことなどを指して、大善と述べられたのだと拝します。他国侵逼難によって一時の苦は受けるかも知れないが、他国侵逼難が明らかになったことで、日蓮大聖人様の教えが間違いのないものである、と気づき、一切衆生が南無妙法蓮華経と唱え、御本尊様を受持することができるようになるのだから「大善」なのだと思います。
日蓮大聖人様が 『立正安国論』で予言されたことが目の当たりになった「大善」は現証です。この現証を固く信じることで私たちも成仏の功徳を受けることが叶います。大聖人様が 『立正安国論』の中で仰せ下さる「折伏」の修行に励み、功徳あふれる今世と、善き来世を顕現してまいりましょう。
今年の夏も高温が予想されております。体調に十分留意して、折伏の修行に励んでまいりましょう。檀信徒御ー同のご健勝をお祈り申し上げます。
(広布唱題行[聖寿802年7月2日]にて)