『曾禰殿御返事』 (第二祖・日興上人のお手紙・歴代法主上人全集1-149頁)
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彼岸御佛料(みほとけりょう)員数(いんずう)の如く見参候了
富士の珍しき物に候上は申し盡くし難く候
恐々謹言
八月二十七日
白蓮花押
曾禰殿御返事
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【字語句の意味】
〇彼岸御仏料=お彼岸の法要に際して、御本尊さまへの御供養。
〇員数=数量数のこと。
〇見参=対面する、目にする。ここでは、曾禰さんの手紙に書かれていた通りの品々を拝受しました、の意。
〇富士の珍しき物=曾禰さんが秋の彼岸会にお供えするために、富士山中に入って貴重な食べ物を採り、御供養として日興上人にお届けしたものと思われます。どのようなものだったのでしょうか。わざわざ「珍しき物」と仰せになっていることから、普段は口にすることができないものだったのでしょう。このお言葉から、曾禰さんのご信心、ご先祖を大切にするお心がよく理解されます。
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【御文の意味】
お彼岸にあたって、御本尊様への御供養、お知らせ戴いた数の通りに確かにございました。富士の珍しい貴重なお品です。まことに有り難く御礼を申し上げようもありません。
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【彼岸の捉え方】
「彼岸」は、梵語でParamita(パーラミーター)といいます。〔波羅蜜(はらみつ)〕は漢字を当てはめたもので、その意味するところは、「彼の岸に渡ること」です。
仏教では、私たちの暮らすこの世界を「穢土(えど)」あるいは「娑婆世界(しゃばせかい)」と呼び、苦しみや悩みに満ちたところであると説きます。この娑婆世界を「此岸(しがん)=こちらの岸」にたとえ、煩悩や業や苦から起こる迷いや悩みを大きな川の流れにたとえます。悩みや苦しみの反対にある心を成仏・覚りと言い、川の対岸である「彼岸(ひがん)=あちらの岸」にたとえるのです。したがいまして、一年中が彼岸であり、毎日が仏様の心を得るチャンスに恵まれている、と考えることができます。
日蓮大聖人様は、私たちが穢土の此岸から苦しみや悩みの大きな川を越えて、彼岸に着くために、南無妙法蓮華経の船に乗ることを勧めてくださいます。勧めに従いご参詣の皆さまは、南無妙法蓮華経の船に乗っておられますので、苦しみや悩みを乗り越え、間違いなく仏様と同じ命を得ることができます。ご安心下さい。
ただ一つ付け加えますと、南無妙法蓮華経の船の推進力は「自行化他に亘りて南無妙法蓮華経」と大聖人様が教えてくださいますように、お一人おひとりが、自らの行として「南無妙法蓮華経」を唱え、さらに他の人々を教化する「化他」の「南無妙法蓮華経」を唱えることで、仏様の心はより一層盤石なものとなる、ということです。
「化他の南無妙法蓮華経」をたとえて申しあげれば、美味しいお饅頭を独り占めしないで、皆で分け合って食べることです。「お彼岸に佛乘寺にお参りし、南無妙法蓮華経とお題目を唱え、ご先祖の御供養をしました」と一言まわりの方に伝えることは、化他の南無妙法蓮華経を唱えたことになります。これによって、功徳はなお大きくなります。
暑さはまだまだ続きそうですが、亡き方々の来世の幸せと、周りの方々の幸せ、さらにはご自身の幸せを願い、精進を重ねましょう。
皆さまのご健勝を心よりご祈念申し上げます。
(令和七年秋季彼岸にて)